歯科にかかる患者さんにとって、一番気になるのは治療が痛いのではないかということだと思います。
確かに治療は、歯石を取ったり、歯を削られたり、抜かれたりと嫌なことだらけです。
私の飼っている犬も、決して歯石を取らせてくれません。
それもこれも痛みが原因ではないかと思います。
歯科医が考えている以上に患者さんの痛みにたいする恐れは強いようです。
そこで痛みを感じなくさせる麻酔は大事になってきます。
特に毎日の治療で使われる浸潤麻酔の方法は特に大事です。
当医院では、最初に3分間歯肉に表面麻酔を塗り、その後33Gの一番細い注射針を使い、2分ぐらいかけてゆっくり薬液を注入するようにしています。
というのも、浸潤麻酔が痛いのは、最初の刺入時と薬液を注入する時だからです。
刺入時の痛みは細い注射針を使うことと、表面麻酔を使うことでなくし、注入時の痛みは時間をかけてゆっくり行うことで感じなくしようというわけです。
日本の歯科で通常使用されている麻酔薬は殆どリドカインにアドレナリンを加えたものです。
アドレナリンは血管収縮薬の働きをしています。
従って血圧を上げるとよくない患者さんには別のシタネスト・オクタプレッシンという麻酔薬を使います。
欧米ではリドカインより効きがよいアーティカインを使うことが多いようですが、日本ではまだ未承認なので使えません。
また医科の皮膚に注射をする際に使用するペンレスを口腔粘膜に使用することも考えられますが、適用外使用になるので患者さんにそのことを説明し、同意を得なければいけません。
浸潤麻酔の他にも伝達麻酔という方法もあります。
これは主に下の歯の6,7,8番目の歯を麻酔したい時に使います。
顎の骨が厚く通常の浸潤麻酔では薬液が浸透していかない時、下顎の骨の中を通っている下歯槽神経を麻酔する方法です。
特に横に生えて口の中に顔を出していない8番目の親知らずを抜く時にはよく行います。
ただこの方法では頬側は麻酔されないので、頬側には浸潤麻酔を併用する必要があります。
いずれにせよ、気分が悪くなるなどの偶発事故を防ぐ意味でも当医院では、麻酔は時間をかけ丁寧に行うように心がけています。