最近インターネット上の医療情報に何の根拠もない
情報がかなりあるようで、困ったことことです。
おそらく医療人ではない人が、2次、3次情報をもとに内容の正確さより、
分かりやすくインパクトのあることを記事にするのでしょう。
しかし、こと人の体に関することは正確を期すことが大事で、間違った知識では
健康被害を被る恐れがあります。
さて、私は歯科の学会にいくつか属しているので、定期的に学会誌が送られて来ます。
今回は、その中から患者さんにとって有益な情報を書くことにします。
それは京都大学口腔外科学の疫学研究研究のことです。
以前新聞などでも取り上げられたので、ご存じの方もいらっしゃるのではないか
とおもいますが、一言で言うならば「毎日歯磨きをきちんと行うことで、動脈硬化が防げる」
ということです。
それは、京都大学と滋賀県長浜市が連携して、平成19年から平成22年にかけて
行った疫学調査により明らかになりました。
つまり、年齢、性別、喫煙の有無、血糖値などの動脈硬化に関わる条件を排除して
歯周病で失った歯の本数と、CAVIという方法で動脈硬化の程度を計測し、この両者の
関係を解析したところ、失った歯の本数が多いほど、動脈硬化の程度が悪くなっている
ことが分かったのです。
いままでの研究でも、歯周病菌によって口の中で炎症が起きると、それにより炎症性
物質が血管に入り込み、その結果血管の内面が傷ついて動脈硬化を引き起こすことは
分かっていましたが、さらに疫学調査でも明らかになったということです。
私も診療していて、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化からくる既往歴のある
患者さんは歯周病が進行し、歯垢、歯石が付いて、歯磨きが悪いことを
実感しています。
たかが歯磨きというなかれですね。