読解力低下に思うこと

はや今年も師走になりました。
木枯らし1号は吹かないようですが、次第に冬らしく
寒くなってきました。

風邪やインフルエンザにならないように注意したいものです。

さて昨日のニュースでOECDの15才の国際学力調査で、
日本が「読解力」で15位に急落したということを報じていました。
しかし本・新聞を読む生徒では平均点は高いようなので、
まあ活字を普段から読んでいると読解力がつくという至極当たり前の
結論ですが、私はこのニュースを聞いて、以前のあることを思い出しました。

それは三島由紀夫に『春の雪』という小説があるのですが、
何年か前に映画化された際、ある大学生が原作を読もうとして、
途中でギブアップし「これ現代語訳ないんですか?」と言ったという話です。
最近の流行りの小説を読むような訳にはいかなかったのでしょう。

三島の場合読者にかなり挑戦的なところがあり、小説によってコロコロ文体を変えています。
例えば代表作の『金閣寺』ではトーマス・マン+森 鴎外の文体で書いた
と公言していますし、『盗賊』や『純白の夜』ではレイモン・ラディゲみたいに、また『愛の渇き』
では、モーリヤックみたいにとかいろいろ読み手を刺激してきます。

私も昔大学生になったばかりの時に『金閣寺』を読みましたが、やはりその当時でも
手ごわかったです。

ただ昔の大学生はまだ知的虚栄心というものがあって、「お前それも知らないの?」とか
言われたくないという感じがあったので、無理して背伸びしてでも
難解な本に挑戦するというところがありました。

時代は変わりました。

「現代語訳はないの?」と言った学生に対して、私が答えるとすれば、
「別に『春の雪』は読まなくてもいいんじゃない。好きな本を読めばいいんだよ。
俺たちのころのほうが違ってたのかもしれない。

三島の小説を読みたいのなら『午後の曳航』はどうかな。もっと読みやすいよ。
デビット・ボーイの愛読書でもあるしね』と言ってやりたいです。

それでは、
院長ブログを読んで下さっている皆様、今年も一年ありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。

少し早いですが、メリークリスマス!そしてよいお年をお迎えください。