TCHについて

最近来院される患者さんの中に、はっきりした原因が分かりにくい症状を訴える方が増えている感じがします。 
肉眼で見て、レントゲン写真をとって、歯茎の検査をして診断を下す訳ですが、それでも原因がはっきりしない場合があります。 
こういうケースではTCHを疑うことがあります。
TCHというのはTooth Contacting Habitの略で、1日のうち20分以上、上下の歯を接触させる癖のことをいいます。
患者さんに上下の歯を接触させる癖はありませんか?
とたずねても、ほとんどの方はわからないと答えます。
夢中でなにか集中してやっている時に起き易いので
自覚すること自体が難しいのです。

しかし食事のとき以外で歯と歯を接触させることはよくありません。
さまざまなトラブルの原因になってきます。
顎関節への負担、歯への負担、歯周組織への負担等です。
具体的には
1、口内炎のくりかえし
頬の内側の粘膜や舌の横に歯形がつくため、この出た部分を
噛んで、噛み傷が炎症をおこして口内炎を発症しやすくなります。
2、かみ合わせの違和感
かみ合わせが気になり、歯を接触させる時間が長くなり
関節や筋肉に過剰な負担がかかり
顎関節症になるリスクが出てきます。
3、歯の治療がうまくいかない
義歯が壊れたり、詰め物やブリッジがとれやすくなります。
4、舌が痛い
舌が押し付けられることで痛くなったり、噛んだりいやすい。
5、歯周病が進む
歯を揺らす力が加わり続けるため、歯がぐらつくようになり
抜けやすくなります。
6.歯冠部や歯根部の歯折がおきる。
過大な力がかかり続ける結果、歯がすり減ったり、
ひび割れたりしやすくなります。
7.知覚過敏がおき易くなる。
虫歯でもないのに歯の中の血管、神経が圧迫されて
痛みを引き起こすことがあります。

以上のように食いしばりや噛みしめのように強い力ではありませんが
恐ろしいものがあります。

問題は患者さんがTCHに気付かず、またその怖さを知らないという点にあります。
TCHに気付く方法としては生活空間の中に10枚以上気付きを促す言葉を
書いた貼り紙を貼ることが効果的です。
「離してる?」とか単純に「歯」とか書いた付箋を貼るのです。
そして普段はそのことを忘れて、その紙を見た時だけ、力を抜いて
歯と歯が離れた楽な状態を作ってください。
最終的には「歯が接触していた」と気付く前に、歯が離れるようになります。

・・・・・・と教科書的に書いてきましたが、
実は私自身もTCHがあります。
自覚するのは診療中、一生懸命仮歯を作っているときです。
気がついて慌てて「いけない、いけない」と歯を離しますが
長年付いた癖はつい出てしまいます。
しゃれになりませんね。