ユーミンのこと

9月になりました。

相変わらず気象が変です。
異常な大雨の後、異常な暑い日々、そしてまたやってくる異常な規模の台風。

秋の味覚のさんまも取れず、なんだか異常な日常です。
と思ったら政界までも、安倍総理が辞任することになり、これに同情した発言をしたユーミンまでも
批判される有様です。
世の中、コロナ禍で疲弊しているときに、気持ちがさらにざわつきます。

本当に穏やかな日常が恋しいです。

さて、この京都精華大講師の白井氏の「ユーミンは荒井由実のまま夭折すべきだった」
という発言はちょっと看過できません。

もし、荒井由実名義の最後のアルバム「14番目の月」でユーミンが終わっていれば
「流線形80」も「パールピアス」も聴けないことになります。

3年くらい前に新しいスピーカーを買った時に、真っ先にこの2枚を改めてじっくり聴きましたが、
もう何回も聴いているのですが、1曲も駄作がなく完璧だと思いました。
特に「12階のこいびと」の松任谷正隆のアレンジがよくて、何回聴いても唸るしかありません。

以前私は松任谷正隆主宰のmica music laboratory に通っていたこともあるので、
身内びいきと言われるかもしれませんが、純粋に曲の良し悪しで聴いてるつもりです。
ただ最後に買ったアルバムが「ボイジャー」で、それ以降のアルバムは買っていませんし、正直
最近の曲は殆ど聴いていません。そういう意味ではファンではないんだろうとも思います。

最初にユーミンの凄さを知ったのは「中央フリーウェイ」でした。
転調もカッコいいし、何よりもサウンドに惹かれました。
あとあとジャズなんかも聴くようになった頃このサウンドの謎が解けました。
何気なくマリーナ・ショウの「フィール・ライク・メイキン・ラブ」を聴いた途端に
「あ、これだ!このサウンドだ」と気づきました。

最近、松任谷正隆自身もこのことを本の中で言っています。
「中央フリーウェイ」では「フィール・ライク・メイキン・ラブ」の中でギターを弾いている
デビッド・T・ウオーカーの弾き方をそっくり故松原正樹が演奏しています。

またこの時期「晩夏」もよく聴きます。

私はこの曲の詞が前から津村信夫の「厨」という詩に相通じるなと感じていました。
視覚的な美しさとさらに聴覚的な美しさとで、季節の終わりの静かな情景を現出しています。

「晩夏」の中で犬の名を呼んでいるこどもと「厨」の中で誰かが誰かを呼んでいる声が重なります。

ところで私がこの白井という人に対して言うとすれば、次のようなことを言ってあげたいです。
それは、三島由紀夫が晩年ある作家の小説を強く推奨したときに、その作家は三島の思想とは全く相いれない左翼系の人だったので、その場にいた人からこのことを指摘された時に三島が言った言葉です。

「いやしくも僕はそんなことで、作品の評価を決めたことなんか一度もない!」と憤然として言ったという逸話です。

でも恐らくこういう人に言っても駄目なんでしょうね・・・・・。